伊豆高原の大室山のふもと、鶏遊ぶ無化調中華の宿。
オーナーシェフの竜太郎さんは、化学調味料をつかわないでどうやって旨みを出すかを30年かけて研究してきたそうです。
翌朝に食べる中華粥は日本一旨いと思ってる(個人の感想)。
「オーベルジュ」は、”泊まれるレストラン”といった意味のフランス語です。
シェフは納得いく食材を手に入れるために田舎に店を構え、そんなシェフを追いかけてお客もはるばる田舎まで足を運ぶ。
料理を堪能し、お酒もたくさん飲んだから
「もう動きたくない。」
って感じでレストランに泊まるということが起こったんですね。
仙豆飯店はその中華料理版といったところでしょう。
飯店というと日本人の感覚ですと、食堂みたいなものをイメージしがちですがこれは中華圏ではホテルを意味します。
お話をきくとオーナーシェフの竜太郎さんは、化学調味料をつかわないでどうやって旨みを出すかを30年かけて研究してきたそうです。
中華料理の現状はというと、化学調味料ありきの世界。
真っ赤な色した缶が代表選手なのですが、それらが”魔法の粉”ともてはやされ、誰がつくっても出汁をとったような味を簡単に出せてしまうそうです。手間ひまやコストを削減できるので、人気店を含む多くの中華料理店でも使われているそうです。
30年前の竜太郎さんはそれに対して
「なんか違う」
ってシンプルに思ったそうです。
そして化学調味料を使わずどうやって旨みを出すかの試行錯誤が始まるんですね。
たどり着いたのが素材、塩、油。
食材はもちろん伊豆の海の幸。時々猪の肉なんかも。
野菜のほとんどもこの伊豆半島のもので事たりるそうだ。
塩は海の塩。
いろいろ試して世界の海の塩が17種類ブレンドされたものにたどり着いたようです。
こんな話があるんですが、先ほどお見せしたニワトリの中には養鶏場から
「もう卵生まなくなったから・・・」
と処分対象だった子たちも、含まれてるそうです。
ところがエサにこの塩をまぜて食べさせたら、また卵を生み始めたんですって。
土を蹴って元気に駆け回る健康的な生活になったのも原因かもしれませんね。
次に中華料理に欠かせない油の話なんですけど、大量生産され一般的に料理に使用される油は化学溶剤で大豆などの原料を溶かして油を取り出すそうです。
その工程には複数の科学薬品が使われるようですね。安いというのはそういうことなのでしょう。
僕自身はこれがただちに健康に問題があるのか分からないけど、なかには体が拒否反応を示す方もいらっしゃるでしょうね。
僕も朝マック食べて半日ほど胃が不快だったことがあるのも、使われていた油のせいだったのかもしれません。
仙豆飯店の油は主に有機栽培のべに花油で、種子を押しつぶしてしぼりだしたもの。
圧搾製法っていうらしいですね。
実はこの手の自然な油は体に良くって、スプーンで飲めるほどだそうです。
仙豆にきたときはだいたい胃はパンパンになるまで食べるんだけど、それで不快になることがないんですよね。
仙豆飯店の料理はパンチをお見舞いしてくるのではなく、優しい味です。
食べ進めても、舌が麻痺するではなく、むしろ敏感になっていく気分。
素材を活かす調理は、日本料理にも通じるかもしれませんね。
音楽にたとえても伝わる人は限られると思うが、それぞれの楽器の鳴りがちゃんと聞き分けられる状態で耳に抜けてくる感じ。
僕自身、中華のおいしさのこの宿で知ったと言っても過言ではありません。
無化調に加え、今では「グルテンフリー」の料理にも取り組んでいて、そういう料理を必要とする方たちに認知され始めているようです。
あと実は奥様がつくるタッパイ などの本格タイ料理もこれまた絶品なのであります。
スパイスを鉢ですってご自身で調合するんですよ。
ニワトリ遊ぶのどかな小さな宿、知っていて損はありません。
帰り際お二人がお見送りに出てきてくれました。
木々に覆われた長い真っ直ぐの坂道を登る間、
お二人がずっと手を振っているのがバックミラーにうつっていました。
遊びあるいた夕暮れ、帰り道。
その姿がふと思い浮かび
この旅に最後の天然の味付けがふりかけられるのでした。