草円から5分も歩けば孫九郎にたどり着く。
孫九郎の湯は福地温泉では随一だろうという話題がタビエルの掲示板で一時盛んだったので、私も遅ればせながらの訪問。
宿の前に来るとほんわり硫黄が香ってる。
「もらい湯ですか?」
雪かきしていたハッピ姿のおじさんが風呂場を案内してくれた。
「電気おねがいしま?す」
とフロントに声をかける。どうやら一番乗りのよう。
孫九郎のロビーは古民家風になっているが長座ほど風格があるわけでなく、かといってかつら木の郷ほど洗練さもない。さらに館内奥へ進むとお世辞にも宿泊の食指が動く感じはない。
ただ前出のおじさんやフロントのお姉さんは、上品とは言わないが愛想は思った以上によかった。
「思った以上に」と書いたのは、その前の年は別の宿へもらい湯に行ったのだが、そこでの対応は「歓迎されて無い」感が漂っていたからだ。
もらい湯に指定されているのは露天風呂。内湯は宿泊者専用だ。
露天風呂に出ると、自家源泉のイオウの匂い、そこに鉄分の匂いも混ざる。
湯の色は緑とコバルトブルーが混ざったような色に見える。金属成分が光を反射しているからだろうか。
「なるほど、こりゃいい。」
吐湯口の周辺はサビ色がこびりついているのに、湯はサビ色にならないのが不思議だ。
温度の違う2種類の源泉が混ぜているのが、その硫黄分と鉄分が反応し硫酸鉄に変化することによって湯が色づき濁るのではとの推測が記されていた。
加水・加温はもちらん無く、貯湯タンクもなく源泉から直接引湯しているとのことだ。かなり湯にはこだわってるようだ。
はじめのうちは貸しきり状態で入ることができた。
感覚的に「濃いなぁ」と感じた。なるほど皆さんが“いい、いい”という湯だ。
指の間とか表皮の薄い部分が、少しだけとろみが出るのを感じた。長く続くわけではない。
湯に無頓着な私もこの湯は気に入った。
しばらく湯との対面をおえて周りをみてみると高い山に囲まれていて自然がいっぱいだ。
そうこうするうちに他の客がひとり、またひとり入ってきた。
あとから長靴を見て知ったが二人とも長座からもらい湯に来たようだ。
最初は貸しきり状態だったので写真撮り放題のはずだったが、
カメラを持っていってなくて激しく後悔していたら、連れもおんなじ事を思っていたようだ。
さて、湯上りの感想。草円までの帰り道、
「手肌に細かいパウダーをまぶしたような感じが残る」
「この湯好き」
が二人の一致した意見だった。
お湯重視で泊まったら結構楽しめるのかもしれない。
泊まった方がいらっしゃれば是非とも感想を聞いてみたいなぁ。
タビエルの掲示板で情報をくださった皆さん、
ありがとー!