「自遊人」という雑誌の四季ごとに訪ねたい「1万円台の定宿」という特集記事で、ランキングの1位に選ばれていたのが「村のホテル住吉屋」。

2007年の古い雑誌だけど、記事を読んだら行ってみたくなった。

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広島から新幹線と特急列車とバスを乗り継いで約8時間。

信濃の山並みながめつつ、千曲の川沿い辿る旅。

奥信濃は遠いなあ。

 

バス停から石畳の坂道をゆっくりと登る。

気候が良ければ歩いて行くのも楽しい。

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楽天トラベルの地図では場所が分かり難い。

宿の前を通りすぎると、すぐ近くに、野沢菜の菜洗い風景で有名な「麻釜の噴湯」があるので、それを目印にすれば分かりやすい。

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麻釜のすぐ目の前に宿がある。

約98度という高温の温泉が湧く麻釜からは湯気が立ち上り、温泉情緒が漂う。

いい場所に宿があるなあ。

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宿の前の坂は、結構な急こう配。

荷物が多かったり、足が悪いと歩いて行くのはちょっと大変。

ちなみに宿に電話をすれば、車でバス停まで迎えに来てくれるみたいだ。

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「村のホテル住吉屋」の創業は明治2年。

漫画「のらくろ」の作者、田河水泡が定宿にしていたそうだ。

 

建物は明治32年築の木造3階建て。

110年以上前に建てられた建物、気分は盛り上がる。

本館木造3階建てに8部屋、別館鉄筋3階建てに6部屋、合わせて14の部屋がある。

宿泊をするならば、本館の部屋がお薦め。

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「白樺」という小さな部屋を予約した。

古いけど掃除が行き届いていてとても爽やか。

テーブルには、温泉が徳利に汲んでおいてあった。

饅頭を食べ、お茶をすすり温泉水で一息つく。

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宿泊したのは5月の終わり。

部屋からは、あざやかな緑の木々がさわさわと風に揺られているのが見える。

窓を開けると、温泉と葉っぱの匂いがした。

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窓から外を見下ろすと、湯煙が上がっているところがある。

源泉はどうやらここらしい。

村のホテル住吉屋は、鮮度・純度・温度の高い自噴自家源泉。

敷地内2か所から、90℃の源泉が自噴しているそうだ。

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高温の源泉を、風で冷まし適温にしている。

90℃から45℃ぐらいに、風だけで冷ますのは難しい。

別府の「ひょうたん温泉」のようなシステムを導入するといいかも。

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見るからに「ここから温泉が湧いています」という感じがして良い。

泉質はナトリウム、カルシウム硫酸塩泉。

弱アルカリ性・低張性高温泉。

湯の花がほとんど出ないのが特徴。

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チェックインしたら、まずは温泉に入らないとね。

飲泉も可能で慢性胆嚢炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、痛風、糖尿病などに効果あり。

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「釜辺の湯」

浴室に入ると、硫黄の香りがふわ~と漂う。

硫黄の匂いが大好きな私はテンションマックス。

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泉温が高いので、やっぱり湯船もとても熱い。

野沢温泉の旅館の中では、この宿が一番熱い源泉を持っている。

他に人がいなかったので、申し訳ないがドバドバ水を入れて冷ました。

宿の人も「熱いので水で冷まし適温にして入ってください」と言っていたからいいよね。

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浴室は、大1(露天風呂併設)、小1。

館内の温泉は男女入替制で、毎晩19:00?19:30頃に男女の場所が入替される。

浴槽は全て毎日清掃され、浴槽の栓を抜き、全てのお湯を流し、浴槽を洗い、消毒、お湯の完全入替を行っている。

湯量が豊富だからできることだ。

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奥には露天風呂が併設されている。

露天風呂もやっぱり熱い。

大小二つある浴室は、午前10時から午後2時までの清掃時間中を除き、いつでも利用可。

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露天風呂も熱かったので、水で冷ました内湯のほうに入った。

浴室のシャンプー・コンディショナー・ボディーシャンプーは「環境にも人にもやさしい天然由来の素材」でつくられたマーガレット・ジョセフィン社の商品だ。

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野沢温泉と言えば「外湯めぐり」

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「湯仲間」という制度によって守られてきた、天然温泉100%かけ流しの共同浴場が13もある。

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野沢温泉のシンボルともいえる大湯は、宿から歩いてすぐの場所にあった。

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泉質は単純硫黄泉。

宿泊者は無料で廻ることができる。

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細い路地、石畳、坂道を下駄履きで歩いていると、燕の巣などが見つかり、のどかな雰囲気。

 

日本有数の豪雪地帯でもある野沢温泉村は、良質な雪とダイナミックなコースからなるスキー場目当てに国内外から訪れるスキーヤーも多数。

冬はスキー客で賑わうようだけど、外湯巡りをするならば、春か秋だ。

春先は浴衣で歩くと気持ちいい。

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夕食には、江戸時代から伝わる郷土の祝膳料理「取り回し鉢」が出てくる。

箸付 よもぎ豆富
前菜 根曲竹、鶏塩糀焼、うるい、蕨叩きオクラ、行者大蒜

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椀物 清汁仕立(青豆安平)
向付 信州サーモン昆布締め
焼物 和牛香焼
預鉢 丸茄子、鰊

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揚物 アスパラ東寺揚げ
酢物 若鮎南蛮漬
止椀 たけのこ汁
御飯 アスパラ御飯
デザート 柚子ゼリー

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特に美味しかったのは「取り回し鉢」の郷土料理。

「いもなます」はジャガイモを千切りにして水にさらし、炒め、砂糖、酢、塩、だし汁を加え、水分がなくなるまで煮込んだ料理。

シャキシャキした歯ごたえで、これが旨かった。

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「しょうにいも」は小芋を皮付きのまま炒め、砂糖と醤油、水を加えて3時間ほど煮込んだ料理。

素朴な美味しさで、つまみにもなる。

あんまり「美味しい美味しい」と言って食べていたからか、宿の人がレシピを持ってきてくれた。

本当にいくらでも食べることができそう。

ツレは相当気に入ったようだ。

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私は「和牛香焼」の、肉の柔らかさと旨さに驚いた。

肉は当たりハズレがあると思うが、この日は大当たり。

こんなに旨い肉には滅多にお目にかかれない。

 

ツレが「肉をあげるので、芋をくれ」というので、私は二つ返事で芋を譲った。

ツレは正直なところお腹一杯になり、もう肉が入らなかったみたいだ。残念っ(笑)

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住吉屋で迎える朝。

夕食と同じく、野菜たっぷりの朝ごはん。

 

毎朝源泉「麻釜」で茹でたての「本物温泉玉子」

季節の野菜を生かした「自家製の漬物」

本場信州味噌が香る熱々のお味噌汁。

野菜が大好きな私には、大満足の朝ごはんだった。

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朝食の後は「朝風呂」。

なんて贅沢なんだろう。

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湯船を見るとなにかキラキラ輝いている。

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上を見上げると、ステンドクラスから朝日が差し込み、黄色に青、赤の光がそのまま湯船に写っていた。

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神々しく揺らめく光と、仄かに香る硫黄の匂いに癒される。

たまたま貸切状態だったのだが、素晴らしく静寂な空間を楽しめた。

 

明治2年創業の住吉屋には、田河水泡の漫画、畦地海太郎の版画、河村忠晴の植物灯などが展示されているが、朝湯にも芸術の雰囲気が漂う風情があった。

明治・大正の雰囲気を残す宿で、郷土料理を味わい、硫黄の香りに包まれた源泉かけ流しの湯を楽しめる宿。

しかもチェックインは12時、チェックアウトは11時。

12時にチェックインできる温泉宿なんて初めて見た。チェックアウト11時も珍しい。

のんびりと過ごせるこの宿が「1万円台の定宿」の部で、堂々の一位に輝いたのに納得したのだった。

4 Comments
  1. れおんさん、すばらしい宿泊レポをありがとうござします!
    最後の湯面にゆれるステンドグラスが官能的でした。
    ぜひともその朝風呂の静寂を味わってみたいです。
    れおんさんのレポートといい、口コミ掲示板の12うさぎさんの口コミといい、最近住吉屋熱を掻きたてられてます!

    「しょうにいも」は奥飛騨の「ころいも」っぽい。食べたい!

    1. 硫黄の匂いが好きな人なら気に入る宿だと思います。
      でも小さい浴室は湯船がせまいので、人が多いと入れないかもしれませんね。
      私は奥飛騨の「ころいも」が食べたい!

  2. れおんさんのレポ見てて盛り上がり、6月に泊まりに行くことになりました!まさに今から予約入れるところです。

  3. 住吉屋は是非また泊まりに行きたい宿ですが、遠くてなかなか行くことができません。
    泊まりに行くことになったなんて、羨ましい。
    お散歩が気持ちいいので、お天気に恵まれると良いですね。
    レポートには書いていませんが、宿で出る饅頭がとても美味しいです。
    きっとお土産に買いたくなりますよ(笑)

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