さて夕餉の刻。
個室の和室に案内していただきました。8畳くらいありここで寝泊まりできそうなほどだ。
食前酒代わりに注文したのが「ヴィジエガ」というスペイン産のスパークリングワイン。
冬野菜の前菜から鍋料理まで合うリンゴのような爽やかな酸味と甘みカバだとのこと。
自分はお酒分からないので案内書きの丸パクリですが笑、おいしかった。
前菜は
八汐鱒の手まり寿し、蓮根のアチャラ漬け、丸十の蜜煮春キャベツのお浸しはカツオの風味などなど。
ひつつひとつ丁寧な味付けが伝わるやさしい味わいで、一口ひとくち味の変化を楽しむ。
黒豆はお宿で栽培したものだそうた。大粒でうまい。
蛇腹牛蒡の当座煮はごぼうに繊細な包丁が入れられジャバラ状態に。そのため出汁がいい具合にしみこみ口当たりがこれまた楽しい。
先付けは季節の野菜の酢味噌掛け
ヒラスズキと那須の生湯葉(あともう一品何だったか忘れたっ)
そういえば栃木は湯葉が有名なところですね。この生湯葉もめっちゃおいしかった。
合鴨の治部煮。とてもいい出汁がしみこんでいます。ゴボウがなんとも上品な風味
肉厚のシイタケがその豊かな風味を全体に行きわたらせている。
さてここれが那須黒毛和牛と三元豚の豆乳しゃぶしゃぶ
メインディッシュという位置づけになりましょう。
豆乳の出汁に野菜を投入してから、まずは三元豚をしゃぶしゃぶ
マイルドな汁をまとって
おー、旨い!
次の那須黒毛和牛に備えて残りの野菜も投入。
鍋は銅製ときた。こだわってるな~
つづいては那須黒毛和牛
A5等級です!
こりゃもう
無心でむしゃぶりつくしかありません
鍋に残った豆乳の出汁もスタッフの方が「おいしいですよ」と教えてくれる。
まさに肉と野菜のエキスが存分に溶けだした汁は
とんでもないおいしさ。
だった。鍋のしこまで飲み干した。
セリのごはんおいしかったな~
柚子プリンはレアチーズのような濃厚なプリンに柚子餡がかかってる。素晴らしい味
イチゴはもちろんとちおとめ
大満足の料理でした。
部屋に戻ると夜食が!
さらになんとなんとクリスマスケーキまで届けられているではないかっ!!
「あれっ?クリスマスプランの特典て貸切風呂じゃなかった?」
「うーん、わからん」
なんだか分からんけどめちゃ得した気分!!
しかもこのケーキが生半可ではない。
タルト生地においしい生クリーム、そしてその生クリームを覆い隠すほどイチゴがタップリ!
食器がまた本格的で驚く。高級ホテルで見るような専用のナイフと取りわけの器具。
階下のラウンジへコーヒーを調達しに行き、2度目のデザートタイムだ。
「こんな本格的なナイフ各部屋分あるんかな、揃えるの大変だろうな」
「洗うの大変やろな~」
と感動しながらも間抜けなことを考えながら頂いたのであった。
「このまま寝てしまうのがもったいない・・・」
と言いながら丁寧に敷かれた布団に体を滑り込ませた。
二人ともあっけなく眠りについた。
朝5:00にスッキリと目が覚めたて、大浴場へ向かう。
深夜0時に男女が入れ代わっている。
感心するのが廊下に出ると12月中頃の高原だからかなり冷え込んでいるはずなのにホカホカに館内が温められている。
この快適さのために見えないところでどれだけ気を使われていることか。
朝食も昨晩と同じ個室で
朝食はこたろうファーム直送の野菜達。ドレッシングは人参と玉葱の2種。こしださんが40年継ぎ足してきた鯖の干物。商品名はなんと「ものすごい鯖」という。日光の湯葉、那須産100%のりんごジュース。ちょいから牛蒡。きゃらぶき、そしてシラスは経験したことない美味しさ。
食事処は個室で8畳ゆったり。泊まれるほどだよ。温かい食べ物は器も温められてて嬉しい。
おやどって訪れてみて気づくことがたくさんある。朝食の後、チェックアウトの前にもう一度温泉に入れるか、これけっこうポイントですが多くのお宿では朝のお風呂は9:00まで。8:00から食事するともう絶望的なわけだ。しかし山水閣は24時間入れる。8:30からゆっくり食事しても9:30からゆっくりお風呂に入れる。
冬枯れのころ、心にあかりが灯る時
那須は道端にご馳走のような景色が展開されている
那須湯本温泉がある山の方へ車を走らせる道すがら、自然と調和したおしゃれなカフェや雑貨店が時々見えて連れは「明日ここ寄りたいっ!」と、まんまと目を奪われている。
那須はそういう気分にさせる場所。
いつの間にか恒例となっている12月の温泉旅。
今回は「新規のお宿を開拓しよう」となったのだが宿選びに難儀した。スタートは「硫黄の匂いが元気なにごり湯に入りたい」だった。しかしその路線でリストアップした宿は、欲深い我らに料理面での不安をよぎらせる。決めきれないので家中にある温泉関連のガイドブックを10冊以上引っ張り出してきた。とはいっても家にあるのはほとんど5年以上前の本。すると当時憧れていた宿がたくさん甦ってくる。そしてCREAの表紙を飾っていた山水閣が目に入った。元気なにごり湯の路線はあきらめることになったがここに決めたのだ。
そんなことを思い出しなが走ると、宿は近づいてきたようだ。
冬枯れた無数の木々の間を通っていくと道の先にいユニフォーム姿の人影が見えた。「あれだね」お客の到着を外で待っているようだ。「寒くないのかな」「手足冷えそう」などと言ってるうちに駐車場へ案内される。山間の静かなロケーションだ。
部屋へ案内してもらう途中で館内の説明を聞いていると、通りかかったスタッフが僕らに気づきスッと立ち止まってお辞儀してくれた。そのスマートな立ち振る舞いに、いいお宿に来れたんだなという満足感が満ちて来る。とりわけ僕らはそういうことには敏感なわけではないけど、機械が自動でミス無くいろんなことをやってくれる時代、こんなことがちょっとした感動を生む。
お部屋の戸を開けてもらうと、二人は色めきたった。
居間と寝室をつなぐ廊下は斧(ちょうな)でなぐった風で、その先に見えたなラグと猫足の机も素敵すぎる。さっそく持ってかれている笑
宿全体が茶室のような土壁色で統一されている。そこにりろうそく色した間接照明が灯る。和モダンと言ってしまえばざっくりなくくりになるが奇をてらわない「調和」のデザインだ。デザインの優れたものっていい具合に心の波長を整えるのだ。それは心地よき眠りへの誘いへのプロローグ。チェックインから温泉、食事を経てゆっくりゆっくり時間をかけて上質な眠りへと誘う。清楚なスタッフの落ち着いた、それでいて温かいトーンは静かな子守唄のよう。
外にはチラチラ雪が舞い始める寒さだが、ありがたいことに部屋はすでに十分に温かく保たれていた。
部屋の雰囲気に歓喜の声をあげた連れだがいまは机の上にあった案内帳に熱心に見入ってる。
やがて「飲み物どれにしよっかな~」「料理の量ってどうなんやろう?追加料理食べられるかな?」
と声が聞こえてきた・・・お洒落空間においても安定の貪欲さをキープしている。
人見知りなぼくらは、実は宿の方との接触が少ないほうが気持ちが楽なのでだ。
でも山水閣では逆の現象が。部屋に案内してくださった方と食事処でお料理を運んでくださった方、どちらも一緒にいる時間がとても楽だった。いやむしろ楽しかった。
窓から見える冬枯れた自然がこの宿をいっそう温かく感じさせる。スタッフが空気を温めて待っている。
チェックアウトの時間まで例のラウンジで過ごした。
天気が良いのだろう、朝の眩い光が横から差し込んできて、コーヒーの上でゆれる湯気を露にする。外はきっと寒いに違いない。小さな小さな雪が雪虫みたいにちらちら踊っている。
人間に必要なのはお金でも他人からの評価でもない。ただこの一瞬を愉しむ、そこに幸せが宿る。
静かな静かなひとときを、心に沁みこませた。