宮城県 遠刈田温泉 だいこんの花
宿泊日 2005年10月
お部屋 メゾネットタイプの“えぼし岳”

 

 

 

 

“温泉山荘 だいこんの花”はみちのくの名峰、蔵王連山を望む絶好のロケーションにある。緑に包まれた駐車場の奥に立派な母屋が佇み、それとは不釣合いな自動扉の玄関の奥には、仄かに炭の香が漂う素朴なしつらえの力強い空間が広がっていた。

 

 

渡り回廊からは敷地の景観を損なわぬ様配慮したという、自然林に溶け込む様に建つ高床式の家屋が見える。荷物を持つスタッフと会話を交わしながら、本日の部屋「蔵王連峰を望める」というメゾネットタイプの“えぼし岳”に到着。

 

やさしいあかりと木の香りに包まれた部屋は二人で過すには十分な広さ。ユニークなウッドチェアとテーブル、そしてさりげなくシモンズ社製ベットを備え、素朴なしつらえながらも良質な山荘である事を主張する。右下はだいこんの花オリジナルのポンチョ?(カシミア製で着方が面白い)

 

2階のベランダには、加水,掛け流しの温泉がチョロチョロ流れる一人サイズの半露天風呂が備わる。(部屋によって趣が異なる)新鮮な空気の中、緑の木々を眺め、濁川のせせらぎをBGMに浸かれば、時の経つのを忘れてしまいそうだ。思わずここで暮らしたくなった。

 

母屋から一番奥まった所にある貸切露天“通り雨”はしっとり濡れた木々に隠され、三人入れば一杯な湯船に“蔵王濁川の湯”が滾々と掛け流されている。泉質自体は無色透明な仄かに川の匂いがするさらっとしたもので、杉の香りと渓流のせせらぎが実に心地よい。

 

同じく貸切露天“雪待ち”は“通り雨”への通路沿いにある。“通り雨”より小ぶりな湯船に、同じ泉質の湯が灯篭風の湯口を錆色に変色させながらトロトロと流れ落ち、名前通りな雰囲気を壊さぬ様薪で上手に目隠ししている。

 

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母屋にある個室風ダイニング“コの字”で自家製野菜を主役にした月替わりの“嬉し里山料理”をいただける。それぞれ寒暖めりはり利いた料理の一品出しで、ペース配分も申し分なく、主采は二品から選べたりと楽しい演出をしてくれる。

 

ライトダウンされた館内は大人の雰囲気が漂い、母屋の一角ではデザートワインが用意されていた。また、小とりサロンではコーヒー等のドリンクが味わえるなど、それぞれ充足の時を過せる配慮がうれしい。

 

朝食も母屋のダイニング“コの字”で。洋食をバイキングで選び終えると和食膳を持ってきてくれる。みずみずしい朝摘み野菜、蔵王の乳製品、郷土色を感じる和食膳、中でも手作り豆腐と厚焼き玉子は美味で、結構なボリュームながら完食した。

 

旅立ちの母屋は芳ばしい香りと名残惜しい雰囲気に包まれていて、囲炉裏で焼くかき餅は“だいこんの花”で過したひとときを濃縮した様な甘い味がした。

 

 

 

生憎の空模様の中、鉛色の気分で宿に向かうが、駐車場で待つスタッフの屈託のない笑顔に救われて、辺りを見渡せば結構な原生林の中にいる事に気づき、別荘地をミニチュアにした様な風景の中へ吸い込まれると、窓から見える自然の風景に心が和み、杉林の中に野趣溢れる露天風呂に深く身を沈めていると何時しか爽快な気分に変わった。  やがて蒼いとばりが降りる頃、館内は一気に大人の雰囲気に包まれ、軽快なジャズが流れるダイニングでは、地産地消を“嬉し里山料理”という衣に包み問いかけてきて、一日の締めにベランダの湯船に浸かっていると、急ぎ足で過ぎ去った事が漆黒の闇に映し出されては消えていき、小鳥の囀りで爽やかに目覚めれば、しっとり濡れた木々の合間から勇壮な蔵王連峰の姿を望めた事が嬉しかった。 だいこんの花は新しい宿のあり方を提唱していた。 それは、決して万人受けを目指すでもなく、華やかさを誇張するでもない、何処か懐かしさを感じる素朴な風景の中で“疲れた大人が失いかけたもの”を取り戻す為の空間をホスピタリティ溢れる接客をもって提供する事で、快適な気持ちよいものだった。  私にはそう易々と行ける料金では無いが、喧騒の世界から離れて自分自身を見つめ直したくなったら、四季折々の自然の移ろいを感じにまた訪れてみたいと思った。

 

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