山代温泉 あらや滔々庵
宿泊日?
昔の温泉宿は宿の内には風呂はなく、
だから総湯と呼ばれる共同浴場をぐるりととり囲むように宿屋が建って行ったそうだ。
本日のあらや滔々庵は、総湯のすぐそば。山代温泉の創成期から宿があったことをなんとなく感じる。
優しい灯りにほのかにあらわにされる館内。結城畳が市松のような模様をつくるその先に、中庭の緑が印象的だ。美しい! スリッパ要らずで館内を歩けるのもうれしい。
この宿の姿勢がうかがえる控えめで、センスある帳場。
壁にかかる「あらや」の看板は この宿を拠点に創作活動に励ん だ、あの魯山人の作。
連れはさっそく風格漂う檜の内湯へ。
湯量は1日約10万リットルで山代随一。湯治の精神を大切に し、いずれの風呂もすべて源泉掛け流しされるのだそうだ。
露天風呂付の部屋がもてはやされる近頃だけど、やっぱり温泉宿ならばやっぱり大浴場!
自分は「烏湯」のほうへ。
「烏湯」は闇夜のように照明の落とされた独特な雰囲気。ミストサウナ状態になっている。
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さすが脱衣所の椅子もお洒落。
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湯上りどころにはビールやスプマンテが振舞われている。
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続いて部屋の露天風呂へ。
大きくは無いが、檜の露天風呂が部屋に 備わり、源泉が掛け流しされている。
部屋のテラスに意表をつくデザインチェアー。風呂上りにこれに身体を預けると ぼんやり寛ぐのでした。
料理はお部屋で頂きます。いわゆる正統な高級旅館ですね。
ちょいと緊張しながら部屋で待っていると接客の方がテーブルのセッティングにいらした。物腰が柔らかく、やさしく控えめで安心。緊張もややほぐれた。
「枝豆豆腐シラスとんぶり」枝豆の風味の 効いたムースのような舌触りを楽しみ、 最後に出汁をすすり悦に入る。器も思わず手に取ってみたくなるようなもの。
ふわふわのアサリしんじょうにしゃしゃき じゅんさいが浮かぶ。 出汁の香りが身体に染み込んでいく。
冷製南京すり流しタピオカ入り。
われわれを興奮に導いたアワビの肝焼き。 いろいろな味が交錯し複雑なコクを生む 肝ソースがたまらない。アボガドも大正解!
あらや滔々庵は冬のズワイガニでも有名だが、夏場の毛がにもこんなに旨いとは嬉しい発見。
食後はBAR 有栖川山荘へ。正直なところ、日常生活ではBARなるところは全く縁遠いい自分たちだが、この有栖川山荘の雰囲気は絶対絶対味わってみたかったのだ。一歩足を踏み入れると、 古い建物が放つ色香に包まれる。
「長く残ってきた建物は、それだけでパワーが あると思うんです」と、18代目の若き当主永井孝幸さん
翌朝は檜の内湯が男湯になってました。
源泉が檜の浴槽から惜しげもなく溢れ出てきます。他にお客さんがいないことをいいことにこの湯の流れてくるところに寝そべって悦に入ってました。
内湯から続きの露天風呂。3方から当てられる間接照明は 夕刻ならば夕日のように、朝ならば朝日のように風呂に 陰影を与える。
大きさの不揃いな切石が組み合わさると洗練されたオブジェのよう。軽いエンボスが足裏に心地いい。
千年の湯、滔々と・・・
進化を続ける老舗宿で美食に酔う
打ち水された石畳のアプローチから館内に入ると、確かに空気は変わった。
あらや滔々庵は宿好きの間では知られた宿。かといってドーンと構えた風だったり、外観に強い主張があるわけではく、山代温泉の町並みに溶け込んでいる。優しい灯りにほのかにあらわにされる館内。結城畳が市松のような模様をつくるその先に、中庭の緑が印象的だ。いかにも「ロビーです」といった商業的なカウンターは存在せず、代わりにすこし奥まったところに時代和家具が置かれているのみ。
優しい立ち振る舞いのスタッフが迎えてくれた。
宿には代々の大聖寺藩主ゆかりの部屋もあれば、和を踏襲しながらも現代的なセンスで作り変えられた露天風呂付の客室もある。今回私たちがお世話になったのは後者のタイプ。主間とローベッドの寝室、テラスには露天風呂。特別な人と過すにこれ以上のシチュエーションはない。しかも「ドアを開ければ、ハイすぐお部屋」ではなく部屋の中にも廊下が通っていて、館内と客室との間に少し“ため”があるのが嬉しい。眺望に恵まれているわけではないが窓に映し出される木々の緑は一幅の絵のごとく、ここを居心地のいい場所にかえる。広さを感じさせるテラスではないが、それでも一人用の露天風呂と斬新なフォルムのデザインチェアが収まる。障子で仕切られた、室内とも室外ともつかないあいまいな空間。源泉かけ流しの湯がちょろちょろと湯舟に落ちて心地の良いBGMとなる。ここは温泉街と反対側で山側に位置するため何の物音にも邪魔されずひっそりと過ごした。
大浴場の露天風呂の美しさには感嘆するしかない。表面に軽いエンボスのある、大きさの不揃いな切り石が組み合わさると、えも言われぬ洗練されたオブジェのようになる。直角のコーナー部分は端正な印象を漂わせ、そこに湯が滔々と静かに注がれている。混じり気のない源泉がお風呂の風格をさらに向上させる。3方から当てられる間接照明は夕刻ならば夕刻のように、朝ならば朝日のように風呂に陰影を与える。ずーっと眺めていたい。
さらにこの宿は源泉にもこだわり、内湯、露天ともに源泉かけ流しを貫く。高級旅館では案外おろそかにされがちなところだが、圧倒的な湯量を誇るお湯があればこその芸当だ。
風呂上りにはスパークリングワインや缶ビールなどが無料で振舞われているのにはテンションが上がった。連れが上がってくるのを待つのも楽しい時間に代わる。
ここ宿には実は極上の隠れ家がある。BAR 有栖川山荘。昼はお休み処で夜はバーラウンジとなる。一歩足を踏み入れると、古い建物が放つ色香に包まれる。「長く残ってきた建物は、それだけでパワーがあると思うんです」と、18代目の若き当主永井孝幸さんはいうが、それを何時間も長居したくなるような魅力的な空間に設えるセンスは見事としか言いようがない
この宿のクライマックスはなんといっても料理だ。部屋に夕餉の膳の準備が始まった。「地酒の氷室仕込み」を食前酒に料理がスタート。川エビ、イイダコ、白瓜の昆布締めに混じって、どじょうの串焼きやえびすとよばれる卵料理など加賀伝統の味が織り交ぜてあるようだ。鴨肉が印象深かった。噛めば噛むほどに味が浮き上がってきて、後味も香ばしい。
「イチジクの酒蒸し胡麻クリームソースかけ」は口の中でほどけていくイチジクが上品な淡さ。イチジクのほのかな甘みを胡麻が包み込みコクが生まれる。「枝豆豆腐シラスとんぶり」枝豆の風味の効いたムースのような舌触りを楽しみ、最後に出汁をすすり悦に入る。
われわれを興奮へと導いたのは「アワビの肝焼き」。初夏の名物料理なのだそうだ。名前の通りアワビに肝のソースをかけて貝焼きにするのだが、肝ソースのいろいろな味が交錯する複雑なコク。アボガドと一緒に口に含むと味の未体験ゾーンに突入した。この味が脳裏に焼きついた。