大分県の南部、熊本県とも程近い標高１０００メートルの高原に湧く筋湯温泉は、共同浴場も残る昔ながらの素朴な雰囲気漂う温泉地。周辺にも数多くの温泉が 湧き出る恵まれた環境にある筋湯は湯量も豊富で、いたるところから湯煙が上がっています。
「秀月」は、中心部から少し離れた閑静な場所に建ちます。街道から急な坂道を降りたところに建つ宿には、木の温もりを感じさせる母屋と食事処、それに 離れになっている８つの客室があるだけ。宿の周囲は別荘地があるほかには何もなく、自然に囲まれた環境は温泉を楽しみのんびりするには最適です。
こじんまりとした宿のエントランスを通ると、黒光する木材が温かな雰囲気を漂わせるフロントと休み処があり、さらに奥に入ると洒落たムードの喫茶室、 食事処となっています。まず宿に到着すると、母屋の休み処か喫茶室にてお茶とお菓子で一服。
?
大浴場は客室から外に出て、階段を降りた先の浴室棟に男女別の大浴場が一つずつ。石造りの浴槽は母屋同様に黒光りする木材を多用した造りで、薄暗いな がらも趣があります。どちらのお風呂も窓を全開にすれば半露天風呂にもなるもので、一転して開放的な雰囲気になります。
洗い場があまり広くはありませんが、客室に露天風呂があり部屋数からみてもほとんど他の利用者に出会うことはないので、それほど気にはならないです ね。と言うよりも、実際はほとんど貸切で利用できました。雰囲気の異なる浴室は男女交代制。
?
食事処は部屋ごとに仕切られた個室で掘りごたつになっており、のんびり食事することができます。夕食は地元の食材をふんだんに使った創作懐石で、出来 たてを一品ずつ運んでくれます。虹鱒のホイル焼きや林檎を丸ごと使ったグラタン、この土地の名物でもある地熱で蒸した「鶏の地獄蒸し」や「だんご汁」など 手の込んだ料理。
?
山菜の天ぷらや胡麻豆腐、豊後牛の鉄板焼きなど素材を活かした料理も並び、こちらも美味しくいただけました。朝食にはジャージャー牛のミルクや豆乳豆 腐なども出され、お腹に優しいものが並びます。夕・朝食共に高いレベルで、地元の食材を上手く活かした素晴らしいものでした。
?
一つの棟に２?３部屋が入る離れですが、個別に玄関も備えています。室内は和室にベッドルームを備えた和洋室タイプで広々。好きなときにベッドにゴロ ンとできるのも魅力です。間取りは全ての客室で同じですが、専用の庭が付く部屋や眺望が望める部屋など、値段は同じなので好みで選べる。
なによりの楽しみは全ての部屋に備わる露天風呂。最近は部屋付きの露天風呂は珍しくはありませんが、それが源泉掛け流しで、広々とした浴槽が備えられ ているとなると貴重なもの。更に大抵は露天風呂付きの部屋となると宿泊料金が高めになりますが、この宿ではお手頃な料金で利用できます。
部屋付きのお風呂は岩風呂や檜風呂、さらに庭園を望めるものから、まるで部屋の中にあるような屋根付きのお風呂までと客室によって造りは異なりま す。まさに自分だけのお風呂として温泉を楽しむことができるでしょう。大抵の利用者が食事の時ぐらいしか外に出ないと言うのも頷けますね。
全ての客室が離れで、それぞれに趣の異なる露天風呂が付きます。客室は全て和洋室でベッドルームが備わり、広々としたもの。部屋付きの露天風呂も広めで、 源泉が常に溢れ、もちろんいつでも温泉を楽しめます。基本的に到着時以外は宿の方が入室する事も無く、布団で寝たい場合も自分で敷くことになりますが、何 より自分達だけの時間を大切にする事ができます。もちろんそのような接客方針からもサービスは必要最低限。それでもフロントでの応対、食事時のサービスな どは素朴ながら家庭的なもので非常に好感が持てました。行き届いたサービスは期待できませんが、それ以上に宿側ののんびりと寛いでくださいと言う姿勢は高 く評価できるものです。洗面所やお手洗いなども機能的に、また最新の設備が備えられ快適。客室の設備としては冷蔵庫がない点が気になりましたが、それ以外 に必要なものは全て揃っており不満はありません。また冷蔵庫が無いと言っても、客室の近くにソフトドリンクとビールの自動販売気があって全て定価販売、飲 み物に限ってはルームサービスも可能なためそれほど気になる事は無いでしょう。なにより飲食類の持込は自由と言うのも嬉しいですね。専用の個室食事処でい ただく食事も、地元の食材をふんだんに使ったもので品数豊富。味の面でも素晴らしく、こちらも大満足。雰囲気や食事面でも秀逸で、全てにおいて高いレベル でまとまっていると言えます。そしてなによりも宿泊料金がお手頃で、このレベルで泊まれる宿としては最高のコストパフォーマンス。アクセスの不便さはあり ますが、全ての面において高いレベルであり、日常を忘れて温泉で寛ぐには最高の宿です。
