寒ぶりや新鮮な魚で有名な氷見。その魚たちが水揚げされる氷見漁港のすぐ近くに魚恵はあります。
初めてここを訪れたときは、日本庭園を思わせるきれいな庭や水打ちされた石畳が高級料亭のようで敷居が高いのでは・・と緊張した。
玄関を開けると女将さんや従業員の方の明るく元気な「いらっしゃいませ」の声に緊張がほぐれる。まぁ、私どもはもう何度もここに足を運んでいるから、いまさら緊張するわけでもないが・・・。
客室6室のうちの一部屋。部屋はそれぞれ趣が異なっていて、こちらもまた民宿とは思えない、気遣いのある造りとなっている。部屋の窓からは海を眺める。
2?3人も入ればいっぱいという感じの風呂ではあるが、温泉であるのがちょっぴりうれしい。氷見には温泉が何箇所か涌いていて、この宿ではそれを運び湯しているようです。まぁ泉質がどうのこうのという感じではないが、季節の節目節目で菖蒲湯や柚子湯にしてくれるという気遣いも。
前菜サーモンのカルパッチョサトイモ田楽バイ貝いつも違うものを出してくれるのでとても楽しみな一品。和食にこだわらず創作料理を出してくれるのが魚恵のいいところなのだ。
海の旬、山の旬をマッチングさせて、こんな素敵な逸品に仕上げるのが魚恵の真骨頂。目で楽しみ、香りで楽しみ、歯ごたえ、舌触りを楽しみ、味覚を楽しみ、後味に酔う。
さばきたての寒ぶりを大根おろしとたっぷりのわさびで頂く。11月だと最盛期にはまだ少し早いが、どうだろうこの霜降り具合!!軽く噛むと身がサクサクと裂けて、濃厚な脂がじわりとにじんでくる。うーん幸せ!
ぶり大根というのはぶりと大根を一緒に煮込んだ富山の冬の郷土料理。今回頂いたのはそれをベースにした創作ぶり大根。同じ出汁で煮たと思われるアン肝と穴子がのせられている。冷製なのに魚くささがなくぶりのうまみが凝縮されている。穴子もアン肝ももちろん大根も絶品だ。
ホタテとカニのタルタルソースホタテの甘みとタルタルソースのさっぱりした酸味が絶妙。女性が喜びそうな一品。もちろん私もほっぺが落ちそうでした!
何度行ってもいろいろな料理で楽しませてくれる。「今日もおいしかったね」と宿を後にし、「今度はいつ行く?」と車の中で早速次の予定を計画中だ。
「キトキト」とは富山の言葉で新鮮の意味。魚恵ではまさにキトキトの魚が食べられるのだ。 富山湾は天然の生簀とたたえられる魚の宝庫。中でも氷見沖には「ふけ」と呼ばれる海底があり、プランクトンの豊富な場所。この恵まれた環境が定置網という漁法を生んだ。冬場は脂のたっぷり蓄えた寒ブリが、魚にうるさい輩の舌を唸らせる。日本近海を回遊するブリが富山湾で一休みし。ここで更なる航海のためにじっくりと脂肪を蓄える。だから脂ののりが他とは比べ物にならない。 豪快な漁師料理ならば、漁師町を探せばいくつもあるが、この活きのいい鮮魚を、ひとつ質の高い料理にして食べるとくれば、ご主人の浜出さん自ら板場を仕切る、ここ魚恵だろう。 早朝自ら市場へ仕入れに行き、その日手に入る一番いい素材で本日のメニューが決まっていく。さらには、山へ分け入り、山の食材を採りにも行く。こういう料理こそその土地の本当の美味しさを味わうことができる。新鮮さを何より大事にした海のものと、仕込みからじっくりと手間をかけた山の旬との絶妙な取り合わせを楽しめるのだ。 とても手の込んだ料理でありながら、それぞれの素材自体にはあまりてを加えていない。鮮魚自体の歯ごたえや色つやを存分に楽しめる料理だ。 料亭風の風情ある佇まいではあるが別段仰々しい挨拶があるのではなく、女将さんの目の届く客室数。民宿らしいといえばふすま一枚で仕切られた部屋がちょっと難なところはあるが、二家族で利用するにはいいかもしれない。 ご主人はあまり表に出てこないが、自ら腕を振るう料理は”旨い”に対する心意気を感じる。きっと料理を通して、お客さんとコミュニケーションしているのだと思う。