温泉街と呼ぶにはあまりにも静かな、路地裏のような車一台がノロノロと走れるほどの細道にたどり着き、「あっ、ここここ」と記憶がよみがえった。
到着したらまずここへ。ラウンジは「館主の部屋」というらしい。お客のためというよりは主の趣味が高じたラウンジのような気がする。高そうなオーディオ類が積みあがりジャズが鳴っている。ここは話をする場所というよりは音楽を聴く場所と言ったほうがいい(それくらい音量がでかい)。
松本民芸家具のロッキングチェアーとそれに掛かるクロスの組み合わせがかっこよくて、ご主人に訊いてみると、「いや、高いもんじゃないですよ」どこか外国の織物だと言ってた気がする。
あらたに寝湯ができていた。終わりかけの桜の花びらが一枚、どこからともなく湯船に舞い降りてきた。2,000円/30分(1組様)
脱衣所、木のにおいがプーンと迎えた。木曽五木、つまり。ヒノキ・アスナロ・コウヤマキ・ネズコ・サワラでできてるらしい。江戸時代には「木一本、首一つ」と言われるほど厳しく伐採を管理された木だ。
木曽五木の風呂。十和田石の湯船を満たすは、江戸時代には松本城主に、「御殿の湯」と愛された源泉。いまも中庭でこんこんと湧く。宿の前身は殿様の別 荘であったらしい。
露天風呂はちょうど宿の中庭に位置する。背もたれがいい具合に角度があって、湯の落ちる音を聞きながらここで長湯。
湯と檜の混ざった匂いは、いいな。ここは空いていればうち鍵でいつでも入れる。
風呂からあがったら、色気のある時間になっていた。この回廊はこの時間帯が一番好きだ。
中庭を囲むように宿が建っている。設計は古民家再生の第一人者、あの降幡廣信なのだ。
風呂を一通り入り終えて、食事までの時間をここで夕涼みすることにした。この枯山水、ご主人さんが泉を引くのだが、その様子を目撃した知人は「すごい気迫と形相」で声すらかけられなかったという。奥に見える銀色の囲いの中に、奈良時代から沸き続けてる源泉の「束間の湯」がある
足湯とスパークリングワイン。いえ、飲んでません。
食事処は路地をはさんだ向にあり、そこへは地下通路でいく。
ちなみに地上から行くとこんなところ。
旅館すぎもと 宿泊レポ 前編 - 到着からお風呂まで- ←いまここ
旅館すぎもと 宿泊レポ 後編 -夕食から思い出話-