薄明かりの狭い通路を歩く。抜群の雰囲気なのだ。焼きが入ったような黒い板壁と黒光りする床板。旅籠の風情が充満だ。もうすっかり昔話の住人になっている。
2.柚子の皮のコンポート。甘露煮ほろ苦さと濃い目の甘さが旅の疲れをホッとほどかせる。スタッフは割烹着姿で、心和む眺め。古民家の宿。
3. 到着の時に、客は拍子木を打ってその到着を宿に知らせるらしいが、そうとは知らずに「こんにちは?」と入っていった。部屋は6.5畳の小ぢんまりとかわいらしい部屋。窓の外には川が流れている。現代の感覚でいえば狭いはずなのだが、なぜかこの空間心地良かった。
4.札を入浴中にひっくり返して、家族風呂。広すぎない風呂場は黒っぽい色の石と木で囲まれた漆黒の闇。そこに裸電球の温かい光が浮かび、もうもうと充満した湯気を照らし出している。がっしりとした石の湯船は力強く、守られているような安心感を与える。
5.もうひとつの家族風呂にはフロントで鍵を借りて向かいます。ドアを開けるとこの光景。いや?、堂々としたもんですね。これはなんとご主人自ら石を切り出して、むかしながらの”さんわ”というもので固めたらしい。
6.壁湯温泉の名前のもととなっている露天風呂。川に沈んだ壁のあたりから温かい湯が湧いているようです。底が見える透明度でこれが神秘的なのだ。30分 以上つかっただろうか。どぼどぼと湯がどこかへ落ちていく音が聞こえなくなるくらいもうろうとしてきたとき、この風呂と一体になれた。
7.料理は板の間の広間で頂きます。前菜の地元手づくりの刺身こんにゃくは、からし酢味噌で。そうそう、この地方は馬刺しが名物ですね。ネギとしょうがを巻いて、どろっとした甘口のたれで頂いた。
8.山芋の茶碗蒸し。ほんのりと出汁が漂い、すりおろされた山芋がとろりと喉を愉快にさせて落ちていく。美味です。
9.豊後牛、夢ポーク、会長がこしらえた椎茸。天ぷらの自然薯をはさんだ海苔の天ぷらを食べたときは気持ちは最高に高ぶった。鳥とごぼうと椎茸の団子。鳥の旨みを引き出す味付けも絶妙だ。ひと噛みするとそこから旨みが湧き出してくる。右下は朝食より。
10.そして、ここの名物はなんといっても自家製のお米。なんとふんわりしたご飯。そして初めて食べる豊かな風味。口に運んだときに香り、噛んでいるとだんだん甘みが湧いてきて、のどを通るときにもう一度香る。ご満悦の自分。
風呂場の戸を開けて思わずにんまり。
帳場近くの家族風呂。広すぎない風呂場は黒っぽい色の石と木で囲まれた漆黒の闇。そこに裸電球の温かい光が浮かび、もうもうと充満した湯気を照らし出している。がっしりとした石はごつごつと無骨で、でも守られているような安心感を与える。ジャグジーの泡の音が無ければ1時間はじっくりここで瞑想するとこだろう(貸切風呂なので時間はほどほどに)。
つづいて一度外にでてから、もうひとつの家族風呂へ、フロントで鍵を借りて向かいます。木造の棟に入ると再びにんまり。これはなんとご主人自ら石を切り出して、むかしながらの”さんわ”というもので固めたらしい。ここは「日本秘湯を守る会」の宿なんですね。当たり前のように天然100%のお湯だそうです。湯は無色透明で匂いも感じられないクリーンな湯、入浴感はマイルドな肌心地。湯上りはしっとり滑らかで良好。
さて、壁湯の温泉だ。せっかく壁湯温泉に来て、ここの混浴の露天風呂に入らずに帰ることなどありえない。とはいえ九州でも1月の山間部は寒い。脱衣所は囲いはあるものの半露天。寒い。浴衣を放り投げて急いで湯船に逃げ込んだ。なんとなく野の生き物になった気分だ。綺麗な湯・・・。湯は川底近くの岩壁から湯が湧いているようだ。川底が見える透明度でこれが神秘的なのだ。外が寒いのでしっかり温まろうと30分以上浸かっただろうか。どぼどぼと湯がどこかへ落ちていく音が聞こえなくなるくらい朦朧としてきたとき、この風呂と一体になれた。風呂で感じるこんな瞬間が好きなのだ。
「黒川温泉の奇跡」として黒川温泉が全国的な人気になってしばらくすると、「最近は近隣の宿がおもしろいよ」と九州の温泉仲間が教えてくれた。そのひとつがこの壁湯温泉、福元屋。一軒宿だ。
薄明かりの狭い通路を歩く。抜群の雰囲気なのだ。焼きが入ったような黒い板壁と黒光りする床板。旅籠の風情が充満だ。もうすっかり昔話の住人になっている。世に言う古民家の宿ではあるが、デザイナーが巧妙に古民家を模して建てたのとは違う手づくり感がある。まだ福元屋がリニューアルされる前のこと。解体された古民家の材料を譲り受けるとになった。すると偶然にも古民家の造りが得意な大工さんと知り合うことなり、いよいよ古民家風の宿にリニューアルすることになったようだ。お客さんがチェックアウトするとすぐに、一部屋づつリニューアルが施されていく。ろくに設計図も作らず現場で決めていく。全部の部屋が生まれ変わるには何ヶ月もかかっているはずだ。そんな手作りの感じがこの宿のほっとさせる雰囲気を生んでいるのかな。
そして料理がいい。昔っぽい板の間に木のテーブルが6つ。ここに奥さんが作るお料理が運ばれてくる。
馬刺しはネギとしょうがを巻いてどろっとした甘口のたれで。ひと噛みするとそこから旨みが湧き出してくる鳥とごぼうと椎茸の団子。あんかけで食べさせる蕎麦がきの不思議な香ばしさ・・・。自然薯をはさんだ海苔の天ぷらを食べたときは気持ちは最高に高ぶった。
そして、ここの名物はなんといっても自家製のお米。
ご飯が2度香るんです。
口に運んだときにぷ?んといい香り、噛んでいるとだんだん甘みが湧いてきて、のどを通るときにもう一度香る。「ひとめぼれ」は香りの高い品種だそうだが、ここまでの味と風味を保つためになによりも鮮度を大事にしてるそうだ。ふんわりしたご飯。そして初めて食べる豊かな風味。ご満悦の自分。デザートにはレアチーズババロア。ブルーベリージャムがのる。豊かな気持ちになる料理だった。スタッフのおかあさんとの接客はほんわか癒し系。「今日は静ですけど、満館の時も見せたかったぁ」と、”地”でいってる感じがいい。
部屋に戻ったらもう何もすることはない。お風呂にはもう充分入った。ほの暗い灯りの中静かな夜を楽しむことにした。
外はうっすら雪景色に違いない。
ここに書ききれなかった話はブログで