「風の道」という宮崎アニメに出てきそうな名前の散歩道。みやまのおかあさんが育てる稲は収穫の間近に控え、黄金色に頭を垂れる。その向こうに見えるの は薬師田の榎。

 

設計士と4年がかりの構想した、金山杉の新館。そのシンボルとなるのが吹き抜けのロビーです。この先に雑木林があって、その借景がまたいいんですよ ね。ちょっとお洒落な巴んお広場にしたかったような。地元のひととツーリストのちょっとお洒落な交流の場をイメージしたそうだ。ここで、年に数回小コン サートなどのイベントが開催される。

 


里山、農、自然木の空間、静けさ、心和む

 

鳴子温泉郷っていろんなところから源泉が沸いているんです。源泉数は驚くなかれ370本以上!みやまの自家源泉も希少なモール温泉の一種のようです。 お風呂はシンプルに内湯が男湯・女湯一つづつあるのみ。天井付近のむき出しになった梁や煉瓦調のタイルが趣き深し。

 

夕食までの時間、居心地のいい場所を見つけてゆっくり過ごす・・・と言えば聞こえはいいが、頭の中は料理のことしかない。目線の先には古墳の森という 杉林が、5世紀ごろつくられたとされる「石の梅古墳」を囲んでいます。

 

蕗のずんだ合えは私たちの大好物。枝豆の芳ばしさとほのかな甘みが絶妙。やっぱり旨い。そして今回初めて食べた(もしかして前も食べてたけど意識して なかった?)”みずの実”という珍しい山菜のおひたし。しゃきしゃきした歯ごたえなんだけど、少し噛むとネバりがでてくる。出汁とマッチしていい味だっ た。

 

すりおろした大根ともち米でつくった揚げ餅なのでしょう。醤油味がついていて磯辺焼きになっています。素朴であったかいおいしさにはまります。

 

岩魚の田楽は食べなれた塩焼きとはまた違う美味しさ。ひりょうずの中にも色々なものが入ってましたみやまのご主人は「うちのは田舎料理ですからぁ」と よく言うが郷土料理をベースに細かいところにちゃんと手がかかっている。いつも出来立てあつあつをもってきてくれる。

 

締めくくりは、古代米とみそのおにぎり。漬物の旨いこと旨いこと。ちょっとしたデザートもでます。

 

朝食には遠藤屋嘉吉のくるみ豆腐や、クルミやゴマを練りみ甘味噌をシソの葉で包んで揚げた「シソ巻き」 オニコウベの桶職人の手による檜の桶に自家製ササニシキ。蓋を開けると檜とお米の香りが競い合うように立ちのぼる。自然乾燥させた米は味がぜんぜん違うの だそうだ。

 

 

宿に着いたらなんとなく最初に足が向いてしまうお気に入りの場所がある。
金山杉の吹き抜けのラウンジを一通り物色した連れは、「家建てるなら、こんなスペースが欲しい」 と、お気軽にのたまう。無茶をいっちゃいけない。このロビーがとても魅力的に映るのはここが周囲の自然と一体化しているから。大金を出せば(無いけど)材 料の金山杉は手に入るのかもしれない。同じ設計士さんに頼めば同じものを設計してくれるのかもしれない。(いや多分してくれないだろう。なにしろこの宿は みやまの主人が設計士と4年がかりで構想したものだ。)でもこの窓に映し出される景色をだれも売ってはくれない。

特に名の知れた宿というわけでもないのに、なぜかこの宿目当てに訪れるお客が全国にいる。実は私もそのひとり。みやまへ電話をす ると、おかあさんが「はいはい、もしもし?」と言って出ることも珍しくない。その声を聞いてなんとも言えない安心感を感じる。この宿「旅館」っぽくないん ですよねぇ。システマチックな感じが全然ない、別荘気分な宿です。宿というよりあったかい木の家です。

数件の温泉宿が肩を寄せ合うある、温泉街というにはあまりにも素朴な通りからすこし離れたところにあるお目当ての宿。“田園風景 の中に佇む木造の洒落た一軒宿”そんなイメージを持って訪れると、なぜかそこは茅葺屋根の農家の家先。入り口には、宿であることを主張する目立つ看板は無 く、木と同化してしまった立て看板がひとつ。 何かの間違いかと戸惑いながらよくみると、その隣に木々に隠されるように小洒落た建物が見えてくる。回を重ねるうちにこれが里帰り気分になるから不思議。

まずは風呂で旅の疲れを落とす。近頃の温泉宿はやれ貸切露天風呂だ、やれ客室専用の露天風呂だとやかましいが、ここは質実剛健。内湯が男女それぞれ1箇所 づつのみ。それで物足りないかというとそんなことはない。 イタリアの中庭などで見かけるような色も不揃いなレンガ調のタイルに黄色かオレンジがかった褐 色のお湯。肌触りが優しい。みやまのお湯は自家源泉。正直、泉質にはかなりアバウトな私なので、みやまのお湯にはさほど頓着してなかったのです。要は食い 気が勝ってたという事でしょうか。
ところが、いくつか温泉を回るうちに「あれー、このお湯みやまのに似てるなぁ」と思うことが何度かありまして。その一つが北海道の十勝川温泉 「三余 庵」。十勝川温泉は植物性のモール温泉として北海道遺産にも認定されています。ネットで調べてみるとみやまのお湯は”アブラ臭”が特徴の珍しいお湯のよう ですね。そして温泉ビューティーの石井さんのブログを見ていて納得しました。やはりみやまのお湯は希少なモール温泉の一種のようです。

とはいえ、私がこの宿に惚れている一番の理由は料理にあります。宿の周辺は田んぼや畑。主人の実家は代々農業を営んできて、いま でもここでお米を育て、野菜をそだて、茸を育てている。これらの農作物を十分に活かした田舎料理。でも家庭料理ではなく、程よく洗練された滋味が体に優し く染み込む。旅館の料理が気張った懐石料理である必要がどこにあるだろうと、この料理を食べるたびに思う。

 この居心地のよさは、つくりものではない。家族で客を迎えるので客室は5室あるけれども、3室がうまったらもう満室。無理をしな い。それ以上予約の電話が鳴っても「あいにく満室になってしまい…」といって詫びる。そういえばこのご主人から「こだわり」というような大上段に構えた言 葉を聞いたことがない。ちょっとした宿ならば主人も作務衣などを纏ってたりするが、主人はいたって普段着。気を抜いているわけではない。そのほうがお客さ んは自然体に過ごせるだろうというある種の気遣いなのかもしれない。
これまで高級旅館を泊まり歩いた旅の猛者が、今では「宿みやま」を定宿にしているという話を何度か聞いたことがある。「高級旅館は確かにいいのだがスキが なさ過ぎて気が張ってしまう」というのがその理由。そういえばこちらのご主人から「こだわり」というような大上段に構えた言葉を聞いた記憶が無い。
周囲の自然と響き合い、里山を招きいれた宿。吹き抜けのラウンジの大きく開かれた窓からは光と緑がたっぷり注ぎ込まれている。ここではだれもが自然体の自 分を見つけるでしょう。お母さんが育てた米と採れたての野菜を体内に招き入れてしまった私たちは山ふところの宿が一層好きになった。

 

このレポの下書きで書いていたブログ

  1. 山ふところの宿みやま レポ準備 枕
  2. 山ふところの宿みやま レポ準備 キーワード編
  3. 山ふところの宿みやま レポ準備 ロケーション編
  4. 山ふところの宿みやま レポ準備 館内編
  5. 山ふところの宿みやま レポ準備 温泉編
  6. 山ふところの宿みやま レポ準備 本館編
  7. 山ふところの宿みやま レポ準備 料理編

 

2 Comments
Leave a reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です