蘇山郷に泊まってきたときのお話をします。熊本・阿蘇の内牧温泉にある温泉宿です。
蘇山郷に泊まってきたときのお話をします。
熊本・阿蘇の内牧温泉にある温泉宿です。
ここは与謝野鉄幹・晶子夫妻ゆかりの宿という老舗の旅館です。
九州には行ってみたい宿がたくさんありすぎるのですが、今の時代はLCCを使うと関空から数千円で飛んでくれるので大助かりです。
草千里
熊本のICから阿蘇に向けて車を走らせること約1時間。
ぼくが「阿蘇」と聞いて真っ先に思い浮かぶ情景は、牛たちが丘でのどかに草を喰む姿。その場所はというと草千里ヶ浜というところです。通称草千里です
草千里に向けて車を走らせている途中で早速、あか牛とご対面。
道路の直ぐ側まで来ていて驚きました。
草千里にむけてさらに上っていきます。
あそこにも牛が数頭見えますね。
草千里に到着です。
観光の写真とか見ると大きな池に水が溜まり、青々とした草を牛たちがはみ・・・、みたいな写真が出てきますが、いまはその季節ではないようです。
この草千里は外輪山の一部にありまして、つまりむかしの噴火口をぐるっと取り囲む縁のところにいま立っているわけです。遠く向こうに見える山はその外輪山のドーナツの反対側と言うことです。いまたっている場所がどういうロケーションかつかめましたでしょうか?
阿蘇のあか牛たちです
あっ牛もアキレス腱伸ばすんですね。
もう大丈夫ですか?
あっ、アキレス寄ってきました。アキレス寄ってきました。
近いな〜。
ごめん、なんももっとらんよぉ
このあとどんな合図があったのか全然気づかなかったのですが、牛たちがゆっくり、でも一斉に移動を開始しました。どこかで餌やりがはじまったようです。
大観峰
つづいて大観峰へ。くるまで2~30分の距離です。
山がなんか黒いであります。
地元の人の話ではちょうど数日前に野焼きが終わったところと言ってました。
この野焼きですが、なんのためにせっかくの草を焼いてしまうかわかりますでしょうか?
似ているものとしては焼畑農業というのがあるので、草木灰を肥料にしとるんやろうと思うかもしれませんが、もちろんそういう意味もあるのかもしれませんが、主な目的は木が成長して雑木林になってしまうのを防ぐためなんですって。なんでそれがまずのかっていいますと、そうです。
木が生い茂ってたら草は生えにくくなるし、木々の間を散歩してる牛って想像つきませんよね。
つまりこの野焼きが草原を守ってるといえるのです。
野焼きについては日本書紀にも記載があるらしいですから、まぁざっと1300年以上前から行われていたってことになります。
今見えているあたりが内牧温泉です。
この図でみるともっと分かりやすいですよ。
何を言いたいかといいますと。
何万年か前にこの火山がどっかーんと噴火して、そこには窪地ができますよね。そこに土とかが流れ込んできて土地ができた。そこに内牧温泉があり、また約5万人の人々が暮らしているんですって。
なんかすごいダイナミックな話です。
内牧温泉は昔の噴火口の上に湧く温泉なんですね。もうそれだけで温泉の素晴らしさが想像できます。
箱根の外輪山というのも。なるほど同じ仕組みですね。今回それがよくわかりました。
ASO MILK
aso milkというおしゃれな店があったのでよってみました。ジェラートなんですがトルコアイスみたいにねっとりした食感。こくがありながら飲み込んだあとは爽やかな風味がのこります。こういう店が一軒ある だけでこのエリアの印象はがらりかわります。
玄関
そして本日の宿に到着です。
風格のある玄関ですね。与謝野鉄幹・晶子ゆかりの宿とあります。
玄関の様子からすると、例えば飛騨古川にある八ツ三館のような歴史ある和の宿かなという印象を受けましたが、中に入ってみると、天井が高くてラグジュアリーのホテルのテイストもすこし感じます。でもわりと木をふんだんに使っていて、それが旅館ぽい和やかな居心地をつくってる気がします。
・スタッフたちは黒いスラックスにベストというスタイル
・庭を見に行こうとしたら、くまモンにガン見されてました
・チェックインカウンターがおもしろいことにドーナツ型になってます。チェックインが重なったときに3方向に対応できるようにとのことでしょうか
大浴場
では早速温泉に向かいましょう。
(男湯)
こちらは大浴場の男湯です。
緑がかったにごり湯は自家泉源でしかも自然湧出とのこと。
この宿のお湯の使い方には「自然に湧いた温泉を、可能な限り自然な状態で浴槽に投入する」という強い意志が感じられます。言い換えますと温泉はボーリングして地表にくみ上げたものではなく、自然に湧き出てくる温泉で、それに水を足すこともしなければ加温することもしないお湯を循環させることなくそのまま溢れさせてるということです。
まさに天然温泉です。
火山の噴火口跡にある温泉ですが、意外なことに硫黄の匂いはほとんどしません。舐めてみるとほんのり鉄分のような味。この色と味からふと「胃腸の湯」と呼ばれる白山の中宮温泉のお湯が思い浮かびました。もしかしたらここも胃腸の湯かもしれない。
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム硫酸塩温泉(暖和性低張高温泉)
(女湯)
特別に女湯も見せていただくことができました
かけ流しのお湯が惜しげもなく流れていますね。
一人用のお風呂があって
飲んでもよさそうで、痛風に効能有りとありました
杉の間
与謝野夫妻のゆかりのお部屋である杉の間を見せていただきつつ、会長の永田さまから興味深いお話をお伺いしました。
この回廊の床板はつなぎ目のない長い長い何メートルもある床板でできています。
このお部屋のすごいところは樹齢千年の一本の杉の木から作られているということです。
お城?神社?から一本の杉の大木を譲り受け、それを柱に、床板にして建てられたという驚くべき建物。
釘なども使われてないそうなので宮大工の仕事ですね。
ガラスは当時のままというから驚きです。波打ってます。
与謝野鉄幹・晶子夫妻がお泊りになられたのは昭和7年、じつはその当時はまだ旅館をしていなくて、私邸であったそうです。
夫妻はこの宿で歌をいくつも詠まれていて、うち2つが床の間に掛け軸で飾られていました。
バーラウンジ
さらに館内探検。
ラウンジにはたくさんの焼酎が!
畳敷きっていうのがいいですね。スリッパ脱いでくつろげます。
ここは後で寄ってみることにしましょう
貸切風呂 たる湯
貸切風呂を覗いてみましょう。2箇所ありまして基本的にはどちらも予約制のお風呂です。じつは貸切の方は時間がなくて入っていません。
まずは熊本の酒蔵で実際に使用されていた酒樽を使用した本格的な「たる湯」。脱衣所も余裕の広さで好印象。
予約制ですが、24時以降、翌朝までは予約なしで入浴できます。
貸切り露天風呂緑彩の湯
もう一か所貸切風呂がありますよ。
こちらは予約制の貸切露天風呂です。
半露天風呂で、もちろん源泉にこだわっているようです。
部屋
そしてここが今日の僕の部屋です。
この奥にはシャワーブースがあるんですよ
畳敷きにツインベッドの和モダンなお部屋
日が暮れてしまったのでブラインドがおりていますが、景色もなかなかですよ。それは翌朝の様子でお伝えします。
気になったことを挙げるとすれば
隣の部屋の音か少し聞こえることだ、木造の宿のような感じのボリュームなのでよほど騒がしい人が隣でなければ困ることはないだろう。
夕食
エレベーターもあるんですが階段のデザインがかっこいいので降りるときは階段です。
ぼくの生業は旅館のHPの作成なのですが、今回はそれにまつわる勉強会で訪れてえいます。ですので料理は通常の宿泊のものではなく、スウィートに宿泊される方用の料理になっています。ご注意ください。
(食前酒)
いくり酒という食前酒で料理がスタートです。
いくりって耳慣れないですがスモモのことを言うようです。
(先付け)
先付けは阿蘇蔵農園のサラダ。木の切り株みたいなお皿が面白いですね。
サラダはもちろんドレッシングが秀逸です。「これ売り出してほしい」という声がよく聞かれるようです。
(前菜)
季節のもの土地のものがちょっとづつ。工夫ある盛りです。
鯛の昆布締めいくら乗せ
餅鮑肝ソース
一文字ぐるぐる
ふきのとう天ぷら
辛子レンコン
(お造り)
山女魚
馬刺しの炙り
奥阿蘇鱒
この馬刺しがですよ、めっちゃ美味かったです。あと山女魚を作りでというのも珍しいですね。
(焼物)
筍の朴葉焼き
運ばれてくると朴葉のかおりがプーんとただよいなんとも良い香りです。
そして春を感じる筍の活力ある味
(肉)
まさに絶品とはこのことなんだと言うのが、このあか牛のヒレステーキです。
これはほんとにうまかった。
本わさびをすりすり
肉質は柔らかく、脂っぽさがまったくなく、でもまったくぱさついてません脂っぽくないのに肉汁は豊かなんです。ゆっくり噛んでいると赤みの旨みをじっくりと堪能しました。
不思議です。このボリュームの肉がすっと胃袋に収まっていきます。
(食事)
だいぶ満足していたところにもう一山
鯛茶漬け
ゴマダレ
(デザート)
しめくくりは「無口になるプリン」というネーミング。カニのポジションでも狙ってるんですかね。
カラメルソースを掛けて。めちゃ美味しかったです。
ワインジュレ 季節のデザート
そうとう満足度の高い料理でした。
今回は特別にスイートルームに宿泊する方用の料理だったわけですが、通常のお料理はどんな感じなのか気になります。宿泊料金はスイートが2名で10万円くらいで今回のお部屋は2名で45,000円程なのを考えると、料理もぜんぜん違うものと考えた方が無難です。
ラウンジ
寝る前にラウンジに立ち寄り。バーテンダーさんに焼酎を選んでもらいました。「下戸である」と胸を張ると「ではこちらなんかいかがでしょう。」とフルーティーで飲みやすい焼酎を出してくれました。
おやすみなさい。
<朝の部屋>
おはようございます。
前の日は日が暮れてしまっていて撮れなかったお部屋からの景色です。
ここは数年前の噴火口で外輪山にぐるっと囲まれている。すごいロケーションです。
ここだけ時が止まったような空間
朝風呂
朝風呂へ行くと奇跡のような光景がそこにありました。
まったくもって神々しい。いったいなんのご褒美だよ。
朝食
すっかりいい気分になって食事処へむかいました 。
同系色でまとめたなかなかスタイリッシュな食事処です
昨日は勉強会ということでこことは別のところでいただいたのですが、もしかしたら通常は夕食もここでいただくのかもしれません。
入り口付近ではせいろが湯気を上げています。
なにを作っているんでしょうか
豆腐ですね。そして下の段には、豚の角煮が温められています。
スタッフさんご協力ありがとうございます。
そしてフリードリンクがありまして、
阿蘇農園のニンジンジュース、果汁100%のりんごジュース、オレンジジュース、反対側にはコーヒーと。
おっ、ASO MILKがありますよ!昨日ジェラートたべたお店です。
この牛乳世界大会で三ツ星を獲っているそうです。
「体蘇る阿蘇の恵み」と銘打たれた朝食です。
イケメンスタッフが蓋を取って簡単に説明してくれます。
(豚の角煮)
豚の角煮 オレンジ風味 生産者はやまとんファームさん
温豆腐 生産者は国産大豆を原料に湧水でつくる木村豆腐さん
ベーコンとバジルソーセージ このバジルソーセージうまかったな。高原に来るともう雰囲気だけで美味しいと感じます 生産者はひばり工房
ごはん ごはんは阿蘇高原産のひとめぼれです。
朝食はこの阿蘇エリアのプチ見本市のようだ。
宝の山
ここにくる前日は、霧島のあるお宿のご主人とお話をしていたのですが、
その方が旅館関係者と話しているときに、こう訊いたそうです。
「こんど熊本の方に泊まりに行こうと思うんですが、勉強になる宿どこかあります?」
すると
「それなら是非蘇山郷を。」
という返事が返ってきたそうです。
業界でも注目されている宿なんですね。
で、件の霧島の宿のご主人はロードバイク乗りです。
蘇山郷は与謝野鉄幹・晶子夫妻ゆかりの宿ですが、最近では「弱虫ペダル」という人気の漫画の舞台にもなってるそうです。ということで僕も弱虫ペダルをアマゾンプライムで観始めたのですが、なかなか出てこないなぁと思ったらどうやら劇場版の話のようです。この宿はサイクリストの聖地にもなっているようです。
ここにいると宿の地元愛、阿蘇愛が伝わってきます。
朝食もそうですし、地域を紹介する印刷物もそうです
いいものがたくさんあるのは間違いなさそうだが、それだけではなく自分の宿にさえお客さんが来ればいいというのではなく、阿蘇のいろんな魅力を楽しんでもらってそれが蘇山郷に泊まる体験をより豊かにしてくれるという気持ちなのでしょう。
朝食をいただきながら、空想の中で阿蘇の山を上空から俯瞰して、
aso milkはあの辺りだな。ソーセージはあのあたりで作ってるのかな、温泉もたくさんあるんだろうな、今日も牛は草を食んでるんだろうな・・・などなど、宝のような山を思い浮かべてました。