穂高温泉(郷)は安曇野有明地区の別荘地に中房温泉から引湯された新興温泉地(といってももう50年)で、美術館やゴルフ場に蕎麦処、多くの神社仏閣が点在するリゾート地でもあります。
そうした立地からハイセンスな宿も多く、こちらでも同地の「お宿和み野」が紹介されています。
今回の宿も20年前に開業して以来、「おとなの隠れ家(HPより)」として温泉宿ファンの間で密かな人気の施設です。
立地は山林の別荘地でともすれば見逃しそうな地味な佇まい。
垣根の間の石段を下りると大きな引き戸の玄関が見えてきます。
民芸調のロビーでチェックイン、古民家そのままの見事な天井の梁のラウンジで茶菓をいただきながらご主人とよもやま話を。
と、突然バタバタという大きな音がして猿の群れが出現、ご主人が模擬銃で必死に追い払う姿を見て唖然としました。
ほっておくと食べ物を盗んだり大変な厄介者ということ。
ご主人は猫が大好き。四匹の餌代や病院代で「ベンツ一台分は使った」とはご主人の弁。
部屋は全五室。本館に二部屋、離れに三部屋、いずれもご主人のご趣味である陶芸産地の名が冠
今回は離れの「織部」を選択、前室三畳・主室十畳・トイレ・洗面所付きの和室です。
風呂は三か所、いずれも無料貸し切りで空いていればいつでも利用できます。
本館と離れに檜風呂各一、庭に庭園露天風呂が一つ設えられています。
いずれも中房温泉からの引湯、単純温泉69.3度、pH8.6、給湯量を絞って無加水でかけ流しにしています。
離れの「備前の湯」以外は終夜入浴可能。
やはりこちらで特筆すべきはその料理でしょう。
季節の地の食材を使い、郷土料理の技法を取り入れたセンスの良い懐石風コースは絶好の酒菜。
こうした料理を供する宿はなかなかなく、想起される宿は長野では、今はなき大町温泉郷「あずみ野河昌」、大鹿村「旅舎 右馬允(うまのじょう)」、鹿教湯温泉「三水館」といった上質旅館です。
年配者にはちと量が多いか?と思いつつ地酒も進んで酒菜は何とか完食、しかし最後の蕨御飯は一口でギブアップ。
何とももったいない思いをしました。
心づくしの朝食の後は、ウッドデッキのテラスでティータイムです。
これからの温泉宿の業態は中途半端なコンセプトの施設は徐々に淘汰され、大別すれば「○○リゾート」「○○メンテナンス」といった大手運営会社の経営と、こうしたニッチ指向の個人経営宿に二分化されていくでしょう。
願わくばこうした非マニュアル的でハイセンスな宿が人気を得て発展してほしいと思います。