湯どの庵の宿泊レポを書こうと思いながら進まずにわき道。
普段は現実的にお金にかかわっているけど、たまにこういう本を読むと眠っていたいろんな考えが刺激されて、頭の中を吹き荒れる。
この本はある人が地球によく似た、でも「お金」というものが無いパラレルワールドへ移行してしまったフィクション話。「お金のない世界って成り立つのだろうか?」と考えながら読むと興味深い。

「お金がなければ働かないヤツばっかりになって社会は崩壊するだろう」と普通は考えるでしょう。その前提にあるのが

労働は報酬のため

という考え。
目の前に報酬という人参がぶら下がってないと誰も働かないということだ。

落合陽一氏の本によると、僕のようにバブルの時代に青春を過ごした人間は「お金こそ絶対的な価値」的な価値観に洗脳されているらしい。洗脳したのはだれかというとテレビをはじめとするメディア。都会生活への憧れや高額消費を煽り、それらの完成形としてトレンディードラマが登場した。しかしメディアは単なる最終的なアウトプットであり、その幕の後ろにいたのは広告代理店とスポンサー企業。三者はそういう儲けの仕組みを共有していた。
ちなみに落合氏の論調はもっと優しく、そういう時代も必要だったと言っています。

これからどんな未来が欲しいかを大胆に考えてみると、お金のいらない世界というのは刺激的だ。

今の世の中は適者生存の考えでできあがってる。すなわち能力の高い者、努力した者が力を持ち、富を持つ。けど未来もその考えがいいのだろうか?たしかに競争原理が文明を発展させてきた面はあるだろう。でも世界的な貧富の差、競争、搾取、対立、戦争、環境破壊・・・それらも間違いなくお金の副産物に思える。そもそも努力の機会すら得られない国の人々が貧困で命をおとしているのを横目で見ながら、それも適者生存だからと片付けてよいだろうか?

お金のいらない国の住人がこう言います。
「お金というものを得ることが仕事の目的だと多くの人が思っているうちは、あなたの国の、本当の意味での進歩はないでしょうね。」
「報酬を目的にしていると(中略)、自分の行った仕事以上の報酬を得ようとしたり、自分の利益だけは確保しようとする動きが出てくるでしょう。そうなると、完全な競争社会になります。」
はいこれ実感あります。報酬と自分の働きとのバランスをとり、割に合わないと思うとやめてしまう。

「あなたの今されている仕事が、本当に価値あるものかどうかを判断する、簡単な方法をお教えしましょう。仮に、社会からお金というものがなくなり、その仕事によって報酬を得られないとしても、自分がその仕事をすべきだと思うかどうかです」
僕はこれを逆のほうから考えることがあります。使っても使ってもなくならないくらいお金が一生保証されていたら、どう生きるか、仕事はやめてしまうだろうか?
逆からと言いましたがどちらも「お金」への依存を極限まで減らしたらどう考えるかということで、実は同じ問いかけなのです。

酒井蘭子の器 湖畔の春狸

お金のない世界をどこかで実験できないものかと考えてみたんだけど、たとえば家族というコミュニティーはお金のいらない国の小さなサンプルなのかもしれない。そのコミュニティーをどんどん広げていくことができれば・・・あっ、ジョン・レノン笑
余談ですがここ数年「家事や育児を金額換算するといくらになる」という試算がされますが、ぼくはそれに反対です。家事や育児をお金で計れるような安っぽいものにしないでほしいと抗議する。

 

お金のない国の住人はこう言う

高度に進んだ文明では、お金のためではなく、
社会へ貢献できる喜びのために働く

社会全体の意識がそうなったとき、人類最大の発明ともいわれるお金を大きな感謝で卒業できるにちがいない。

 

ここで終わろうと思ったのだけどAIのことが頭に思い浮かんでしまった。
シンギュラリティと言われているのは2045年ころでしたっけ?
AIロボットがマーケティング・研究開発・製造・流通・販売を行うようになると、モノの製造コストが格段に下がっていく。フェラーリと軽自動車の価格差なんてどんどんなくなっていく世界を考えると、高いものを買って見栄を張るという行為は意味をなくし、モノ・コトの価値を値段に代弁してもらう必要がなくなる。本当に自分に必要なもの、自分の波長に合うものを選ぶようになるだろう。お金のために働くという意識も薄れていく気がする。ただし、本当にそんな楽観的な状況にするためには今の制度の大転換が必要だけど。
でもそんな状況が実現できればお金のためではなく、自分が人間として経験したいことに100%人生を使うことができる世界が生まれるだろう。

One Comment
  1. 「エンデの遺言」について昔のNHKの番組。
    https://youtu.be/Hh3vfMXAPJQ
    のお金のことばかり考えてると卑しいなどと思われがちですが、違うんです。お金の役割をこれからガラッと変えていく必要がるのです。金利が生まれるではなく「老化するお金」このコンセプト最高だな。

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