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ポコポコプクリ
ここはいつも霧がかかっている。初夏の三陸に冷気をもたらす東風が蔵王の峰を一気に駆け上がり雲となる。スコットランドのような上質な定期と湿気。蔵王連峰からの急流が自然林を切り開いた地にお気に入りのリゾートインザオウメッツはある。 ホテルは、煉瓦作り風の二階建ての伸びやかな設計。年をとったら、絶対ここに長く逗留していたいと思える素晴らしいホテルだ。ここの素晴らしさを上げるならば、上質のヨーロッパの朝食、工夫し夜に胃にもたれない家庭的でセンスあふれたディナー、源泉がすぐそばでトロトロと溢れる内湯、満点の夜空と大自然に囲まれた誰も来ない露天、静かな静かな室内、大自然の風景。数え上げれば切りはないが、何より大切なものは「もてなしの心」。その一歩引いたもてなしは、逆に心をゆっくり暖めてくれる。 露天風呂は、ブナの森に囲まれ、プチホテルのセンスにあった野趣あふれる露天で、満天の星空が煌く。春は、シャクナゲに彩られ、秋は宮本 輝が嘆美した錦繍に包まれる。夏は緑の苔の絨毯に囲まれ、冬は雪に閉ざされる。トロトロとかけ流される湯は、じっくりとあなたの心にしみ込んでくる。お湯は無色無臭で、若干の鉱物臭があり、泉源が10m以内にあるから極新鮮。肌がつるつるになる。女性にうれしいお湯だ。友人の外科医は、手術で荒れた手が一発で綺麗になった。 さて料理だが、1Fのレストランで頂く。入室してあっと驚く絶景。全てが絶妙に借景となった心落ち着く景色。ソースから、すべて手作りの料理は、採れたて野菜、地元の素材がふんだんに使われる。料理は、決して派手なディナーコースになっていない。使用する素材も、おどろおどろしいものは何もない。むしろ、胃にもたれない、そして高齢者でも美味しく頂けるコース立てになっている。そのため、必ず、お茶漬けなど和のものが入る。月1回料理の内容が変更になるが、連泊では次々メニューは変わる。 もちろん、難点がないわけではない。開業後、やや立て付けが悪くなった部分、トイレが狭くしかもシャワートイレではない、シェフが変わり、メニューがやや凡庸になったなど、プチホテルならでこその欠点は垣間見える。ただ、それら一切が些細なことに見えるのが、ここの魅力ではないだろうか。 客層は、家族づれも若い人もほとんどいない。年齢の高い、上品で、そして全てを理解した人の栖だ。 朝食は、天気が良ければさわやかな空気の中テラスでの食事となる。ただし滅多に晴れることはないが。たった数組の客のために焼き立てのパンが用意される。 日本の宿は、ともすれば出過ぎる。特にホテルは、ヨーロッパに比べて、肩の力が抜けない。ぎらぎらした若々しさがある。しかし、ここには何のてらいも、何のこだわりもない。アンティークな調度品が飾られた館内や料理など、大人が大人をもてなすとはなにか、このホテルで学んだ。また、宿泊費も、1泊2食付きで1万円代前半で想像以上に安い。かけ流しの源泉宿としても最上級の実力である。 このプチホテルを包むのはいつも静寂、これからも多くのファンの心を癒して欲しい。