そこは脱衣所なんだろうなと、何気なく木枠の戸を開けたら違う光景が目に飛び込んできてちょっと驚いた。
いきなり下のほう、浴室の真ん中あたりに湯船が見え、長い階段が地下の底に向かって伸びている。
戸のこちらでは普通に人が行き来している。
どこで脱ぐんだ?と見るとその吹き抜けの底のほうの2隅に雑な脱衣所があった。混浴というが、女性にはハードル高いだろうな。ちなみに女性専用時間もあったと思う。
浴槽は深くて、立って入るのが基本らしい。
透明な湯はこの深さのせいで余計に清らかに見えて気分がいい。浴槽の底は平らではなくまるで川底のようだ。
宿のご主人はこの灯りを電球色にしようと、きっと思ったはずだ。そのほうがきっと雰囲気がいい。でもこの蛍光灯の灯りがこの湯をいっそう清らかに見せている。

湯治場のほうに泊まってたんだけど、布団の中で本を読んでたら、戸の硝子がミシミシ鳴き始め、長い助走の末これが地震だとはっきり分かる程大きく揺れ始めました。古い建物なので揺れかたは大げさ。じーさん、ばーさんが沢山泊まってるんで、いざとなったら出番だと気合いを入れて急いで着替える。
しばらく、もう大丈夫そうだなとふと見ると、ズボンのチャックウィルソンが全開なのに気づいた。

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