返信先: 氷見 魚恵

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タビエル
#200002168

魚恵の創作料理についてレポートの中で「創作料理」という言葉を使いましたが、ちっとこれが誤解を生んでいる気がしましたので補足です。私は2ヶ月にいっぺんくらいのペースで食べに行っており、それだけ気に入ってますから、私のプライベートなお客さんが県外からいらっしゃるときはたいていここで料理を頂きます。中にはかなり舌の肥えた(と私が思っている)方々もお連れしますが、みなさん概ね喜んでくださっているようです。創作料理という言葉がもしかして都会の洒落た創作ダイニングで出されるような料理をイメージさせてしまっていたかもしれません。料理にはいろいろなスタイルがあります。伝統に裏打ちされた正統な懐石料理から創意工夫の創作料理まで。手を変え品を変え、多様な素材を取り合わせて作り上げていくのが創作料理だとすれば魚恵のはたしかに創作料理ではありません。食材は極めてシンプルです。魚(ただし種類は沢山あります)・野菜・山野草です。ほとんどこれだけです。ギター、ベース、ドラムのシンプルなジャズユニットのようです。オーケストラではありません。魚恵の料理は即興の妙にあります。たいていの宿では、念入りに構成を考えてメニューをつくり、一つの完成品ができるとそれを一定期間だしつづます。食材の状況で小さな変更はありますが一度メニューが決まれば一定期間ほぼ同様の料理がつくられます。一部だけ大きな変更をすると全体のバランスが崩れますし、料理を説明するスタッフだってついていけません。ですから料理に力をいれている宿でもメニューの変更は1ヶ月に1回ほどで2回変更するれ相当がんばっている宿です。(ただしメニューの変更の数が料理の良し悪しを決めるのではなくあくまでスタイルの問題です。)いっぽう魚恵の料理はというと決まったメニューはありません。どんな魚が水揚げされるのか、当日の朝、市場に行くまでわかりません。もちろん下ごしらえもありますから、おおまかな流れはあるのでしょうけど、板場に立つ浜出さんは、瞬間、瞬間ののひらめきで料理し、盛り付けます。氏がこだわるのは「季節感」。野と山で見た風景などをイメージしながらその日揚がった魚と畑の野菜、山から採ってきた山野草を皿と言う小宇宙に映し出すかがこの宿の料理の肝です。ですから珍な食材や奇をてらった演出もありません。そのシンプルな素材だけで即興的につくる料理はさらりと描いた墨蹟のようであり、時間をかけて作り上げる油絵とは異なりますが、これもまた味わい深いものです。魚恵の料理の味わいどころは、ここではないでしょうか。